今回の表紙は月、地球、太陽という順で各々が並ぶ、月食の配置です。この並びで月側からのビュウという事は、当然手前は月の裏側という事になります。あまり見慣れない表情の月に仕上がっているのはその為ですね。この絵を描く為に天文台でもらった紙の月球儀を組み立てて、眺めながら構図を練りましたが、やはり見慣れぬ月の裏側の表情は「月らしくない」という最大の悩みを抱えつつ、下絵を進めて行きました。図鑑の顔になる様に瑞々しく(水はないけど、)空気感たっぷりに(空気も無いけど、)描いています。因に手前に見える大きなクレーターは「東の海」、その左手に「ヘルツシュプルング」が幽かに見えます。 さてここで、先ほど触れた月の空気感のお話。月探査衛星「かぐや」が送って来た鮮明な月の映像は我々の記憶に新しい事と思いますが、あまりに鮮明すぎて、言い換えれば稜線がはっきりし過ぎていて、ゲーム画面のCGを見ているような気分になった方も多いのではないかと思います。影の部分は漆黒の闇というより飽くまで『墨』であり、そこに光の回り込む余地はありません。まるで特殊撮影の青抜きを見ているかのようです。お陰で以前アポロ11号が月で撮った写真を見慣れていた私には、どっちが本当の月なのか理解に苦しむ事となってしまいました。むろんどちらも正しく、画像の正確さという意味ではかぐやの圧勝なのでしょうが、我々は無意識に空気のある生活を送り、絵描きは空気のある表現に慣れているのだなと実感した出来事でした。日頃から思っている、「正しく、かつ好ましい」宇宙の絵について、再び考えさせられる出来事となりました。 裏表紙はダイヤモンドリングですので、是非書店にて手に取ってみて下さい。
by koike_terumasa
| 2009-08-04 15:32
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小池輝政
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