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『零式艦上戦闘機21型』〜「ゼロ戦の秘密」より〜
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「ゼロ戦の秘密/PHP文庫」より、誌面では飛ばしてあった背景入りの絵です。
零戦の中で一番好きな機体なのですが、その理由はフルサイズ12メートルの主翼から来る伸びやかさだったり、ライトグレーの機体色の爽やかさだったりと様々です。機体色は諸説あるようなのですが、まあひとまず「白い零戦」が好きだなあと思ってしまう訳です。ただ直感的に感じるのは、スピード、旋回性、航続距離など様々な要求に対して高次元な回答を出した初期の形状というのは、やはり完成されているなという事。設計者の堀越技師はカウル下の気化器インテークすら不満だったという話ですが、その後の形状変更の長い変遷を思うと、結果的に初期の構想にかなり近い機体であろう事は間違いありません。最も、52型で排気管の形状を変更してエンジンを換えずに速度を増やしてしまうといった、日本人らしい奇策(苦肉の作?)も零戦の魅力の一つではありますね。
 ところで、今回の仕事を受けた時に、坂井三郎氏の「大空のサムライ」を読み返しました。もし読んだ事の無い方は、最後の「〜あとがきに代えて申し述べたき事〜」だけでも読んでみて下さい、きっと人生を豊かなものにしてくれると思います。
久々にこの本を読んで、「やっぱり21型は坂井機を描きたい」と思ったのですが、図鑑的要素も強いこの本に、使えないからと通信用アンテナをノコギリで切った(!)機体を載せるのもどうかと思い、考え直して真珠湾出撃時の機体にしました。参考にしたのはファインモールド製、空母瑞鶴艦載機です。やっぱりプラモデル?と笑われそうですが。。。
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by koike_terumasa | 2009-03-20 19:19 | 飛行機
『シノハラプレシジョン』〜ザ・レイバー・インダストリーより〜
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「ザ・レイバー・インダストリー」誌面に掲載された、レイバーの脚部機構図です。今回はメカニック考証という立場で内部構造図を描き起こしました。
その際に考えたのは現在のロボット技術と、レイバー世界での基礎技術の違いを埋める事です。一番違っているのは何か?それはアクチュエーターの在り方です。現在のロボットの関節は基本的にラジコンのサーボのように回転運動をするモーターで構成されていますが、これではパッシブな負荷がかかった時に軸で受け止める事の出来るエネルギーに限界があります。取っ組み合いをするような機械には厳しい面がある訳ですね。ではどうすれば良いか?という事で、大きな負荷のかかる関節には直線運動をするアクチュエーター、リニアモーター(直動モーション)を併用する事にしました。リニア、というといきなり未来的な響きに聞こえますが、単に直線運動をするモーターと考えて頂ければ良いと思います。現代の乗り物ですと地下鉄大江戸線がこの機構で動いています。レイバー世界では、上記の直動モーションを小型のシリンダーにパッケージングしたものが規格部品として流通している、という考え方です。今回その製造元として「シノハラプレシジョン」なる会社を想定しました。篠原重工の系列会社であるこのメーカーは、物の大小を問わず回転式、直動式様々な形状のアクチュエーターを提供していて、誰でも自由に組み合わせて使える販売体制を整えています。各アクチエーターは電気部品なのでダイオードのように対応電荷に応じてカラーバーが入っています。イングラムの流れを組むレイバーには、主要関節にこのシノハラプレシジョン製直動機3本1組で構成される関節ユニットを与えました。3軸あれば最低限の自由面を構成する事ができる訳で、単純に1自由度の表現を多彩な動きにする為の配慮です。更に各関節のアクチュエーターはモーターそのものですから、電気の出力時には起動し、入力時にはサスペンションとして減衰コントロールをしつつ発電までしてしまう優れもの、というところまで考えました。電気は様々な形に変換され、必用に応じて行ったり来たりする訳です。

ところで、ロボットは関節の動きがそのまま駆動に繋がるのでこんな考え方もできる訳ですが、現実の世界に目を戻すと、偶然にも今年のF-1には回生システムを利用した電力再利用加速装置が組み込まれるそうです。(KERS/運動エネルギー回生システム)
車の動力の基本は回転運動ですし、もちろん駆動系とサスペンションは別の機構です。回生システムはブレーキ廻りに発生する熱エネルギーをバッテリーに還元するシンプルなものですが、F-1の世界にもハイブリッド化の波は押し寄せているという事でしょう。この大いなる実験場で、新システムがどの程度効果を発揮するのか、とても興味深いところです。
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by koike_terumasa | 2009-03-12 12:11 | 書籍
『ゼロ戦の秘密』 PHP文庫
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イラストを手掛けた本が発売になりました。前回の『レイバー・インダストリー』に続き、年末年始に描いていた仕事が実を結びました。
今回描いた絵はゼロ機21型、32型、52型、F4Fワイルドキャット、F6Fヘルキャット、F4Uコルセア、P51ムスタング、スピットファイアと各国の有名戦闘機ばかり。以前日記で書いた、プラモデルを作りながら進めた仕事がこれです。実際形は知ってるつもりでも、パネル分割はどうなってるのか、どんなマーキングかなど、調べなければならない事が目白押しでした。これは図鑑の仕事でも同じなのですが、ちょっとは知ってるつもりになっていた飛行機でもこれですからね、まだまだ勉強が足りません。
 本の内容は、語り継がれる名勝負、エースパイロット、ライバル機との性能比較など、歴史、人、物造りの要素が有機的に解説されていて非常に分かり易いと思います。今までのゼロ戦本の専門書的な敷居の高さを下げる、という製作の皆さんの気持ちが伝わってくる内容です。
文庫本サイズで価格的にもお手頃なので、オススメの一冊です。
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by koike_terumasa | 2009-03-08 12:14 | 書籍
機動警察パトレイバー『ザ・レイバー・インダストリー〜レイバー開発全史〜』 学研ムック
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メカニック考証を務めた本が発売になりました。パトレイバー、と聞いてピンと来る方は30代を過ぎてる事と思いますが(笑)、私も学生の頃にテレビで見ていました。「この物語はフィクションですが、10年後にはどうか分かりません...」的な内容のコピーが番組の最後に流れていたのが印象的でした。本としてはレイバー(ロボット)を工業製品という観点から総括するという内容で、既に街の中を様々な用途のロボットが歩き回っているという前提で話を進めなければなりません。これはなかなか大変な事です。これまで色んな工業製品をデザインしましたが、現実の世界ではロボット産業はまだ産声を上げたばかり。フィクションのリアルロボットとして参考にする産業がまだほとんど無いのが現状です。ただこれも何の因果か、随分前に一度「車椅子補助ロボット」なるものをデザインして、国際福祉機器展に展示した事がありました。その頃はまさか人型のロボットが商売になるとは思っていませんでしたし、こんな形で本のメカニック考証を務めるとも思ってはいませんでした。
8メートルにもなるロボットに街中を歩かせる為にはどうすれば良いのか、という事と、プロダクトとしてレイバーのデザインをどう処理するのか、そしてまだ見ぬ未知のアクチュエーターをどう組み込むのか、といったところが大きな課題です。内部構造の基本骨格やパッケージングは今回自由にデザインさせて頂きましたが、随分独自の解釈も入れたのでレイバーファンの皆さんの反応が気になるところです。ネタを一つバラしますと、レイバーにはサスペンションが無いんです。人間と同じように衝撃は関節で吸収、という新たな解釈を導入した訳ですが、これは構造のシンプル化と、あまりメカメカしくならない為の処理を狙ったものです。
 難しい話はともかく、パトレイバーという題材を元に20年分の技術進歩を補完しながら遊んでしまおうという企画ですので、購入された方も楽しんで頂けたら幸いです。
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by koike_terumasa | 2009-03-01 23:07 | 書籍